アジアの中の日本
〜「アジアフィット2002」を視察して

 北京で開催(11/15〜11/17)された「アジアンフィット2002」。フィットネス後進国と思っていた中国だが、その成長は経済同様著しい。それに比べて日本の現状はどうだろう。アジアの中の日本という立場に立ったとき、日頃見えないことが見えてきた。
 
2002年11月15日から3日間、北京国際貿易センターにて「アジアンフィット2002」が開催されました。このコンベンションは、「アジアンフィット協会」の主催で毎年アジア7カ国が参加して開催されるイベントで、アジア地域におけるフィットネス産業で中心的な活躍をしている企業が参加、アメリカやヨーロッパといった巨大市場に対し「低コストで機能的な商品の提供」を目的にさまざまな交流が持たれています。実際に会場内のいたる所で欧米人と参加企業各社のバイヤーが商談をしており、その模様を各国のマスコミが中継したり、取材を行ったりと活気に満ち溢れておりました。
コンベンション会場外観
◇日本人がいない!?◇

 
会場を視察していると、ふと「違和感」を感じたのは私だけでなく、同行したメンバーも同様のようでした。そしてその答えは、会場の一番奥に設置されているステージ上で行われたデモンストレーションを見たとき、はっきりとわかりました。デモンストレーションは、同じウエアを着た男女7〜8人の中国のインストラクターたちによるもので、それを見ていると「どこかで同じような光景を見た気がする?」…。そうです! 何年か前の日本で行われていたコンベンションそのままの光景が目の前で繰り広げられていました。

 そしてもう一つ、私自身も含め同行していたメンバーが感じていた「違和感」の正体は、盛大に行われているアジア地域のコンベンションにわれわれ以外に「日本人がいない!」ということでした。会場内を歩くときにも自然と「日本人」を探しながら、各ブースやレッスン会場を周っていました。すると、ようやくワークショップ会場の入り口あたりで手を振ってくれているインストラクターを発見。「やっと日本のインストラクターに会えた!」そんな思いで急いで近づいていくと、その方は何と中尾和子さん。彼女は今回、リーボックのプレゼンテーターとして招待されているらしく、いくつかのレッスンを行うために日本から一人で来ているとのこと。そんな彼女に今回のアジアンフィットについて話を聞いていると、彼女以外にも日本からインストラクターが来ている! という情報を入手。しかもそのインストラクターは自らアジアンフィットの事務局にレッスンのVTRを送って今回のプレゼンテーターを務めているらしいとのこと。私はすぐに中尾さんへ「そのインストラクターに会えませんか?」と訊ねてみると、中尾さんからあっさり「あそこにいますよ!」と。その視線の先には…二人目の日本人発見! 彼女の名前は田中智子さん。第一印象は「元気でパワフルなインストラクター」といった雰囲気で、この人なら今回の単独プレゼンテーターもうなずける! といった感じでした。レッスン時間の関係上、中尾さん、田中さんとも本当に短い時間しかお話できなかったのですが、やっと会えた日本のインストラクターの存在にどこか「ホッ」とした気分になりました。彼女たちのもとを離れて、その後も会場内をいろいろと見て回りましたが、結局日本人の業界関係者やインストラクターと会うことはありませんでした。

↑↓中国のインストラクターによるデモンストレーション
◇湧き起こる疑問と問題◇

 イベントを通じて、私たちの中に大きな「疑問点」と「問題点」が湧き上がったのは、言うまでもないことです。まず「疑問点」としては、今回のようなアジア全地域が参加するコンベンションに日本企業の参加がなかったのはなぜだろうか? また、アジア諸国の中でフィットネス先進国である日本のインストラクターがわずか2人しかプレゼンテーターを勤めていないのはなぜなんだろうか? 同時に「アジアにおける日本の存在感と役割」がなくなっているのではないか! という「問題点」も浮かび上がってきました。 

近年、経済が低迷し混沌とした時代が続く日本。それに対し、2001年WTO(世界貿易機関)に加盟して以来、市場開放が急速に進み順調な経済成長を遂げている中国とは対照的な時代背景がありますが、フィットネスに関するプログラム内容やスタジオ経営・機器開発力・その他、あらゆる部分で日本が協力できる点は多いと考えられます。

「アジアに対する日本の存在感」は、今後の日本のフィットネス業界に何をもたらせるのでしょうか。現在国内におけるフィットネス産業の成長率は「横ばい」や「下降」などと言われていますが、ここまでフィットネス産業を作り上げてきた背景には、資産価値を含む多くの人や物などがあるはずです。これらをいまだ発展途中で必要としている隣国に提供することにより日本の存在感を示し、ひいてはアジア全域における「市場づくり」につなげていくことができるのではないでしょうか。さらには今後のグローバルネットワーク時代でアジアにおけるインフラづくりにも多大な貢献ができると考えられます。インストラクターの目指す世界基準が競技会などといったものだけではなく、レッスンを武器に世界でも活躍できるインストラクターへ進化していくことを目指してほしいと思います。また、フィットネス業界を支える各企業のトップの方々には、アジア市場へ対する見識を深めていただくとともに、インストラクターの新たなる職域に対して積極的なコミュニケーションを進めていく考えを持っていただきたいと願っております。

私自身、今回7回目となる訪中を終えた機内で、遠く離れる北京の街並みを眺めながら改めて我々フィットネス業界に生きる者にとって最大の資産価値を示すものは「インストラクターの進化である」と確信するとともに、来るアジアンネットワーク時代に多少の不安と決意を持って今回の視察を終えることとなりました。
                           (株式会社エックスライズ 小泉正太)

展示会場内
中国の夜明け
※ この記事はフィットネスで働く人たちの為の情報誌「FITJOY PROFESSIONAL」1&2月合併号に掲載されています。ご購読希望の方は、氏名・住所・インストラクター歴などご記入の上 こちらまでメールをお送り下さい。

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